データで最適化する施肥計画!
リモートセンシングと土壌診断で肥料コストを削減
近年、世界的な原料価格の高騰や為替の影響を受け、化学肥料をはじめとする各種農業資材
の価格が高止まりを続けています。農業経営において肥料費の負担増は切実な問題であり、
「いかに栽培品質や収量を維持しながら、施肥コストを抑えるか」が共通の課題となっています。
これまでの経験や感だけに頼った一律の施肥管理から脱却し、今注目を集めているのが「データ
に基づく最適な施肥計画」です。
その中核となる技術が「土壌診断」と「リモートセンシング(ドローンや衛星データの活用)」。この2
つのアプローチを組み合わせることで、なぜ劇的な肥料コスト削減が可能になるのか、具体的な
実践方法とメリットを解説します。
- なぜ「勘と経験の施肥」はコスト増を招くのか?
長年同じ圃場で作物を栽培していると、知らず知らずのうちに土壌中の栄養バランスが崩れてい
ることがあります。特に以下のようなケースは、ムダな肥料コストを発生させる大きな要因です。
● 過剰施肥の慢性化: 「念のため多めに蒔いておこう」という心理から、土壌中にすでに十
分存在する成分まで毎年投入してしまう。
● 圃場内の生育ムラの放置: 広い畑や水田では、場所によって養分の残り方にバラつきが
あります。全体に均一に散布すると、栄養が過剰なエリアと不足するエリアが同時に発生
します。
過剰な施肥はコストを押し上げるだけでなく、作物の軟弱徒長や病害虫の誘発、さらには環境負
荷の増大や品質低下を引き起こします。 - 削減アプローチ1:土壌診断による「土の健康状態」の数値化
施肥コスト削減の土台となるのが、科学的な「土壌診断」です。
人間でいう「健康診断」と同じように、土の中に今どんな養分(窒素・リン酸・カリ・微量要素など)
がどれくらい残っているかを数値で把握します。
土壌診断がもたらす具体的効果
● 不足成分のピンポイント補給: リン酸やカリが十分に蓄積されている圃場で
は、それらの成分をカットした単一肥料や配合肥料に切り替えることで、施
肥コストを2〜3割削減できます。
● pH(酸塩基度)の適正化: 土壌pHが適正でないと、いくら肥料を与えても作
物が吸い上げられません。石灰などでpHを調整するだけで、肥料の吸収効
率が劇的に高まります。
「今ある養分を活用し、足りない分だけを足す」という引き算の発想が、コストコントロールの第一
歩です。
3. 削減アプローチ2:リモートセンシングによる「可変施肥」の実
現
土壌診断で圃場全体のベースを整えたら、次はドローンや人工衛星を活用した「リモートセンシン
グ」の出番です。
センシング技術を用いると、作物の葉色や生育状況(NDVI等の生育指標)を空から広域かつ詳
細に測定できます。これにより、目視では分かりにくい「生育ムラ」がひと目で判明します。
センシングの活用
ステップ
取り組み内容 得られるメリット
Step 1:生育データの可視化
衛星・ドローン画像で作物の生育マップを作成
圃場内の「元気な場所」と「生育が遅れている場所」を特定
Step 2:可変施肥マップの作成
生育状態に合わせて場所ごとの最適施肥量を自動計算
必要な場所にだけ追肥を行う計画を立案
Step 3:スマート農
機での追肥
可変施肥対応のブロードキャスタや田植機と連動
施肥作業を自動化し、追肥量を最大10〜20%削減
生育が十分に旺盛な場所には追肥を控え、遅れている場所に重点投入する「可変施肥(かへん
せひ)」を行うことで、肥料の使用量を最小限に抑えつつ、圃場全体の収量と品質を均一に揃え
ることが可能になります。
4. データ駆動型施肥を成功させるための実践手順
データ活用による施肥最適化をスムーズに経営に導入するための手順は以下の通りです。
1 定期的な土壌分析の習慣化
作付け前のタイミングで定期的に土壌分析を実施します。近年では簡易測定キットや地域の農
協・行政のサポートを活用することで、低コストかつ迅速に分析が可能です。
2 無料・低価格な衛星データの活用から始める
いきなり高額なドローンを導入しなくても、近年は無料で利用できる農業用衛星画像アプリサービ
ス(JAXAのデータ連携サービスなど)が充実しています。まずは手軽に自圃場の生育マップを確
認することから始めましょう。
3 施肥実績データと収量の検証
「どこにどれだけ施肥し、最終的にどれだけの収量・品質になったか」を記録・検証します。毎年
データを蓄積していくことで、自社圃場に最適化された「黄金比の施肥計画」が完成します。


