肥料コスト低減・バイオマス
プロジェクト計画書:バイオマス導入耕畜連携化学肥料の低減プロジェクト
子実コーンの持続的生産と、地域バイオマス(堆肥)活用による
「脱・化学肥料」への挑戦
1.プロジェクト発足の背景と目的
現在、日本の農業界は、地球温暖化に伴う激甚な気候変動に加え、国際情勢の不安定化
に起因する「化学肥料および輸入飼料の高騰」という深刻な構造的課題に直面していま
す。
2022年以降のロシア・ウクライナ紛争、急激な円安の進行、そして2026年に入り緊迫化す
るホルムズ海峡問題(中東情勢の地政学リスク)などにより、化学肥料の主原料であるリン
やカリウム、さらには家畜の主要飼料となる穀物の輸入価格はかつてない高値を記録しま
した。これにより、耕種農家(お米や野菜の生産者)と畜産農家の双方の経営が激しく圧迫
され、まさに「地域の農畜産業の存続の危機」を迎えています。
さらに、国が掲げる環境政策「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに化学肥料
の使用量を30%低減することが義務付けられており、環境に配慮した持続可能な農業へ
の転換(グリーン化)は一刻の猶予もない急務となっています。
本プロジェクトは、これまで中四国地域で取り組んできた「転作田での子実(しじつ)とうもろ
こしの完全機械化栽培」を基盤とし、地域の畜産排せつ物を由来とする「バイオマス(完熟
堆肥・液肥)」を100%循環・活用する先進的な取り組みです。これにより、高騰する化学肥
料の大幅な低減(脱・化学肥料)を達成すると同時に、国産飼料の安定生産による「地域
内資源完全循環型(耕畜連携)モデル」を四国から確立することを目的とします。
2.プロジェクトのコアメカニズム(地域内循環の仕組み)
本プロジェクトは、地域の「耕種農家(水稲・コーン生産)」と「畜産農家(牛・豚・鶏)」、そし
て「バイオマス資源」を最新の機械化技術で強固に結び、双方向の資源循環(エコシステ
ム)を構築します。
● 畜産バイオマスの肥料化(畜産から耕種へ)
近隣の畜産農家から排出される家畜排せつ物を、地域の堆肥化施設等と連携して
適切に処理します。近隣住民への環境(臭気)に徹底的に配慮した散布工夫や独
自の完熟化プロセスを経たバイオマス肥料(堆肥・液肥)として、直接圃場(田畑)へ
投入する体制を整えます。
● 子実とうもろこしへの全量投入による化学肥料ゼロ(化成肥料100%代替)
生産効率が極めて高い子実とうもろこしの圃場に対し、この畜産バイオマスをベー
スとした有機質肥料を全面的に投入します。子実とうもろこしは非常に吸肥力が強
く、有機質肥料の栄養素を効率よく吸収する特性を持っています。この特性を活かすことで、
従来の化成肥料に頼らない「化学肥料の投入量ゼロ(100%有機代替)」の栽培体系を確立します。
● 国産飼料の還元による循環型農業の実現
バイオマス肥料によって健やかに育った子実とうもろこしを、コンバイン等の完全機
械化体系で効率よく収穫します。これを地域の畜産農家へ「安全・安心・安価な高
品質国産飼料」として還元(販売)し、輸入穀物に頼らない地域内での飼料自給循
環を達成します。
● 輪作・裏作での無化学肥料・高付加価値栽培への波及
子実とうもろこし栽培とバイオマスの大量投入によって肥沃になった圃場(土壌)
を、次期の輪作や冬期の裏作で有効利用します。これにより、化成肥料を一切使わ
ない高付加価値なブランド野菜の栽培や、無肥料での水稲(お米)、大豆の栽培が
可能となり、農薬や肥料を極限まで抑えた健康な農産物の供給が実現します。
3. 「バイオマス施用」の超省力化とスマート農業(DX)の融合
バイオマス(堆肥)の利用における最大のボトルネックは「散布の重労働化」と「施肥量のム
ラ」でした。本プロジェクトでは、最新のデジタル技術(DX)を導入することで、これまでの堆
肥栽培の常識を覆す超省力化を達成します。
● ドローン・センシングによる圃場分析
必要に応じてドローンを用いて空から圃場をマルチスペクトルカメラ等で撮影し、作
物の生育状況や土壌の肥沃度(窒素含有量など)をリアルタイムで分析(センシン
グ)します。
● トラクター連携による可変施肥技術
センシングによって得られたデータ(施肥マップ)を、スマートトラクターやマニュアス
プレッダー(堆肥散布機)に連動させます。これにより、自動で散布量を調整する
「可変施肥技術」を導入。土壌が痩せている場所には多めに、肥えている場所には
少なめにといった、必要な場所に、必要な量だけのバイオマス肥料を的確に投入す
るピンポイント施肥を行い、肥料効果を最大化させます。
4. プロジェクトがもたらす多面的な導入効果
本プロジェクトの推進は、参画するすべてのステークホルダーおよび地域社会に対して、極
めて高いシナジー効果をもたらします。
● 【耕種農家のメリット】:高騰を続ける化成肥料の購入費用を劇的に削減(最大100
%削減)し、生産コストを抑えます。また、コーン跡地で栽培される水稲や野菜は
「環境配慮型ブランド」として高値での取引が期待でき、農家所得の向上に寄与しま
す。
● 【畜産農家のメリット】:頭を悩ませていた家畜排せつ物の処分・堆肥化コストを地域
の需要(コーン圃場)によって解消します。さらに、為替や国際情勢に左右されな
い、身近な地域で採れた安定価格の「国産子実コーン」を飼料として確保でき、経
営のセーフティネットが構築されます。
● 【地域社会・環境へのメリット】:地域内での「資源・経済の完全循環」が成立するこ
とで、海外への資金流出を防ぎ、地域経済を活性化させます。また、国が推進する
「みどりの食料システム戦略」のフロントランナーとして、地域の温室効果ガス削減
や、耕作放棄地の再生に直接的に貢献します。
5.今後の展開とロードマップ
本プロジェクトは、四国(香川県、徳島県、愛媛県)の先進的な実例をモデルケースとし、中
四国エリア、そして全国の「水稲転作地帯」へと水平展開を目指します。 今後、地域のJA、
自治体、畜産団体とさらに深く連携し、バイオマス肥料の効率的な広域流通配送システムの構築や、
共同利用できるスマート施肥機械のシェアリング体制を整備していきます。四国の大地から、
国際情勢に揺るがない「強い日本の農畜産業」の未来を切り拓いてまいります。
