国産飼料の未来をつくる
中四国エリアで広がる子実とうもろこし生産の最前線
国際情勢の緊張や為替の変動、海上輸送コストの高騰に伴い、日本の畜産業界を揺るがし続け
ている「配合飼料価格の高騰」。中でも、家畜のエサの主原料となる飼料用トウモロコシは、その
大部分を海外からの輸入に頼ってきました。
こうした「輸入頼み」の構造から脱却し、地域内で持続可能な食料循環基盤を築こうとする取り組
みが、今中四国エリア(中国・四国地方)で急速に加速しています。
その鍵を握るのが「子実(しじつ)とうもろこし」の国産化です。中山間地域や水田地帯を抱える中
四国で、なぜ今この作物の作付が広がりを見せているのか。地域が抱える課題と、先進的な産
地形成の最前線に迫ります。
1.中四国エリアが直面する農業課題と「子実とうもろこし」の適合性
中四国地方の農業現場には、他地域以上に切実な2つの課題が存在します。
①中山間地や小規模水田における耕作放棄地の増加
②地域内の畜産農家(和牛・酪農・養豚・養鶏)における飼料コストの急増
山間部や平野部が複雑に交差する中四国エリアでは、高齢化に伴う農地の荒廃が進行しています。
その一方で、同エリアは広島の和牛、愛媛・徳島の養豚・養鶏、岡山や香川の酪農など、
全国屈指の畜産地域でもあります。
水田や休耕地を活用して子実とうもろこしを栽培することは、「耕種農家の農地維持」と「畜産農
家の安定的・高品質な飼料確保」を地域内で同時に解決する特効薬となっているのです。
2. なぜ中四国で普及が進むのか?3つの地域的アバンテージ
中四国エリアで子実とうもろこしの生産基盤が急速に整いつつある背景には、この地域ならではの強みがあります。
①「耕畜連携」を構築しやすい距離感
中四国は耕種農家と畜産農家の地理的距離が近く、地域内での流通ネットワークを組みやすい
特長があります。輸送距離が短いため、輸送コストを最小限に抑えながら、フレッシュで高品質な
国産飼料を地元の畜産農家へ届ける「地域密着型の自給循環モデル」が実現可能です。
②暖地特性を生かした二期作・多期作の可能性
比較的温暖な気候に恵まれた南四国(高知・徳島など)や瀬戸内沿岸部では、栽培期間の調整
や、前作・後作との組み合わせ(大豆やイタリアンライグラス等との輪作体系)の自由度が高く、
農地利用率を極限まで高めることができます。
③自治体・JA・大学が一体となった広域実証支援
岡山県や広島県をはじめ、中四国各県の普及指導センターや農研機構、JAグループが協働し、
地域に適した品種選定(耐湿性・耐病性品種)や、水田特有の排水対策のガイドライン化を進め
ています。
3. 現場が挑む「子実とうもろこし生産」最前線の工夫
水田主体の多い中四国エリアで安定生産を行うため、現場では最新技術とアイデアを取り入れ
た取組が進んでいます。
【中四国における子実とうもろこし生産の推進体系】
[ 耕種農家 / 集落営農 ]
│ ・水田の排水対策(明渠・高畝)
│ ・汎用コンバインでの省力収穫
▼
[ 地域乾燥調整拠点(カントリー等)]
│ ・急速乾燥による品質保持・カビ防止
▼
[ 畜産農家(肉牛・酪農・養鶏)]
└─> 輸入頼みからの脱却・「地域産ブランド肉/卵」の差別化へ
現場の主な工夫
● 排水溝(明渠)の徹底設置: 梅雨期や台風シーズンの湿害を防ぐため、額縁明渠・プラソイラー等を用いた圃場整備を徹底。
● 乾燥施設の広域シェアリング: 収穫後の乾燥・調製工程において、既存の水稲用乾燥施設や地域の共同カントリーエレベーターを
流用・改修して初期資を抑制。
● ブランド化による付加価値向上: 「中四国育ちの国産とうもろこしで育った和牛・豚・鶏卵」としてアピールし、
消費者に向けた価値化を図る。
まとめ:地域農業の未来を切り拓く中四国の挑戦
中四国エリアにおける子実とうもろこしの広がりは、単なる転作作物の導入にとどまりません。
それは、輸入資材に振り回されないタフな地域農業を作り上げ、荒れゆく水田や耕作放棄地を守り、
地域の食を地域で支える「国産飼料の自給モデル」の確立そのものです。
地域の一体となった熱い取り組みは、これからの日本の畜産・耕種農業が目指すべき持続可能な姿を示しています。中四国の最前線から始まるこの波が、全国の地域農業を勇気づける大きな原動力となるはずです。


